レーシックの歴史
佐藤式RK
近視の手術は古くから試みられており、18世紀には既に水晶体摘出による近視治療が行われていました。
現代の近視矯正手術のルーツは戦前の日本にあります。
1940年代に順天堂医科大学の佐藤勤教授が角膜に外科操作を加えることにより近視を矯正する術式を世界に先駆けて臨床応用しました。
この時の手術は、角膜表面と後面に放射状に切り込みを入れる方法(佐藤式RK)です。
この術式はある程度成功しましたが、角膜後面の切開によって角膜の維持に不可欠な内皮細胞が壊れ、角膜混濁を引き起こし、角膜移植を余儀なくされる症例が発生しました。
RK
失敗した佐藤式RKですが、この佐藤式RKを旧ソビエトで改良され、角膜に放射線状にメスを入れるRKという手法で広く手術が行われました。特に旧ソビエトの軍人に対して多く行われるなど、世界で三百万人へ手術が施行され、実績を残しました。
ケラトミレイシスとエーエルケー
1963年にはケラトミレイシスという術式が開発されました。これはマイクロケラトームで角膜を切り取り、冷凍後に旋盤で削り、元に戻すというものです。しかし、時間と手間がかかり、矯正精度も低かったため、あまり普及しませんでした。この術式はフラップを作成して元に戻す現在のレーシックの元になった術式といえます。
その後、エーエルケー(Automated Lamellar Keratoplasty)が開発されました。これはマイクロケラトームでフラップをつくり、その下の角膜を再びマイクロケラトームで削り、フラップを戻す方法です。しかし、乱視が発生するなどの欠点があり、精度も低くこれもあまり普及しませんでした。
PRK
1975年にエキシマレーザーが開発されます。
このレーザーは非常に短い波長を持ったレーザーで角膜をサブミクロン単位で平滑に切除することができます。エキシマレーザーにより、角膜を面状に正確に削るPRK(Photo Refractive Keratectomy)と呼ばれる手術法が確立しました。
PRKは、従来のRKに比べて短時間での手術が可能で、その精度も高いというメリットがあり、1988年アメリカでPRKの手術が開始されました。
しかし、RKもPRKも手術後に傷みが伴うことや術後の視力回復に時間がかかるなどの欠点がありました。
レーシック誕生
この欠点を補うかたちで1990年ギリシャではじめてレーシック手術が行われました。
アメリカでは1995年頃からこの手術が普及し、アジアでも韓国や台湾、シンガポールなどでも早くから普及しました。
アメリカでは、すでに毎年100万件以上の手術が行われ、近視人口の1割にまで普及しています。
レーシック日本の現状
日本では1998年に厚生省がエキシマレーザーの使用認可が下り、2000年1月には製造承認がされました。
しかし、日本では、前述の佐藤式RKの失敗や「手術は最後の手段であるべき」という考え方が医学会に根強くあり、眼鏡やコンタクトレンズで矯正できるにもかかわらず、わざわざメスを入れるということに抵抗もあり、諸外国に比べ遅れをとっており、2004年の時点でも年間5万人程度のレーシック(LASIK)手術が行われているにすぎません。
世界中に4000台以上のエキシマレーザーが稼動しており、年間400万件程度のレーシック(LASIK)手術が行われており、日本にも200台ほどのレーザーがあるとされておりますが、その稼働率は世界からみても極めて低い状況です。
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